遠くから太鼓の音が聞こえる

The Sound of Distant Drums

2012年〜2023年

 先祖代々の墓がある場所と、菩提寺とかつて縁のあった神社がある場所、直径徒歩1時間ほどの距離をたびたび訪れている。
 育った場所からさほど遠くはないが、自転車で気軽に行けるほど近くはなく、暮らしたこともない。祖父が戦前に亡くなったためか、子供の頃から墓参り以外で訪れることはほとんどなかった。
 けれど、土地に残る記憶と私の中に眠っていた記憶が交差する瞬間、柔らかなエネルギーの渦の中にいるように感じるのだ。
 誰しも、生まれた場所には、生まれてきた神秘を知る鍵があるのかもしれない。

 

さようであるならば

If Sush be the Case

1996年〜2008年 撮影

 ここにある写真は、かつて住んでいた場所で写した。いつか失うと予感しながらも、まだ続くと思っていたなじみ深い生活はもうない。変化の時、現実を受け入れるまで立ち止まった後は、前に進んでいくほかない。その時、心に浮かぶ風景がこの場所で写してきた写真になっていた。
 シャッターを押す理由は、思い出として残したいとか、後で懐かしみたいというのではない。「永遠」にしがみつきたいと思う、なにか執着めいた感覚なのである。

The photographs contained here were taken in a place where I once lived. A once familiar life,that I thought would go on despite intuiting that I woule lose it someday,is no more.After that time of transition,from the standstill until I accepted reality,I realized that was is no other way but forwred.The reason I press the shutter button is not because I wish to preserve these memories, or hope to wax nostalgic on them later. Rather,it is akin to an obsessive sensation,a desire to cling to the "eternal."

 

松下君の山田錦

Matsushita's Yamadanisiki

1996年〜2000年 撮影

 1997年、静岡県での栽培は難しい酒米の品種「山田錦」を有機栽培で作り始めた松下明弘さん。当時、農薬を使わないと近隣から苦情が出た時代、亡くなった両親の後を継いで農家になったばかりの松下さんが、信念を曲げずに挑戦した3年間の記録。
 現在、松下さんの山田錦は、青島酒造の銘酒「喜久酔純米大吟醸 松下米」となり、毎年人気を博している。

2000年 酒田市土門拳文化賞 奨励賞 受賞

1997,He cultivated rice for sake「YAMADANISIKI」 in organic farming. It was difficult in Shizuoka because mild weather.
Nowadays Organic farming is liked by many people. In that time, Matsushita received the complaint from other farmers. He worked hard without bending belief. Present, Matsushita's Yamadanisiki became famous becomes sake of aoshima syuzo. This is a record of three years.   2000 Sakata Ken Domon Cultural prize
Encouragement prize

 

おばあちゃん劇団 ほのお

Theatrical company of Grandma「Flame」

1996年〜2006年 撮影

 おばあちゃん劇団「ほのお」は、老いの幸せを社会に問いかけた劇団である。  拠点は静岡県藤枝市大洲。主催の大石さきさんは、昭和50年4月、保健婦を定年退職した後、福祉事務所に在籍して老人家庭を訪問していた。そこで「お年寄り問題の重大さをどうしたら直接訴えることができるのか」と深く考えるようになった。分かりやすく寸劇で伝えようと試み、それが評判を呼んで20名の「劇団ともしび」を誕生させた。12年後に「劇団ほのお」と改名し、誕生から35年目を迎える。
 演じるテーマは「家族」「嫁と姑」「痴呆老人」「お年寄りの交通事故」「寝たきりのお年寄りの介護」そして「老いの生きがい」など。お年寄りの深刻な問題を笑いたっぷりに描く。シナリオは大石さんが書き、劇団員がアドリブを加える。公演は、静岡県内を中心に日本各地で行われている。
 大石さんは「みんなして考えなくちゃ」とよく言う。個人と社会を見つめ、正義感あふれた姿勢に共感している。

Grandma theatrical company "Flame" is a theatrical company that asked the society as for happy of aging.
The base is Shizuoka Prefecture Fujieda City Osu. Year 35 from the birth is received. The performed theme is "Family", "Bride and mother-in-law", "Dementia elderly person", "Elderly person's traffic accident", "Nursing of the elderly person of bedridden", and "Something to live for of aging. ", etc.

 

代官山同潤会アパート

Daikanyama Doujunkai Apartment

1996年 撮影

 1927年財団法人同潤会は、関東大震災の復興を目的に1924年に設立。東京・横浜の16ヵ所に災害復興住宅を建設する。
 その一つ代官山アパートは青山女学院跡に1925年着工され2〜3年かけて竣工された。起伏のある敷地に2階建てや3階建ての住居が巧妙に配置される。全36棟337室、2Kを中心に近代的集合住宅の先駆的仕様を施していた。鉄筋コンクリート造で、娯楽室、食堂、水洗トイレ、ダストシュート、自家水道施設、児童公園や公衆浴場等が完備。戦後は住居者に払い下げられたものの、共同施設の食堂や銭湯は最後まで営業を続けていた。
 1996年初秋に解体工事が始まり、約4年後の2000年夏、新しい都市型複合住宅「代官山アドレス」が誕生した。東京電力の変電所が入っている。

The oldest housing complex in Japan.